山林部

山林部

高野山の森林と歴史

1開創当時の高野山の姿

弘法大師の教えと森林管理
弘法大師の教えと森林管理

弘仁7(816)年に弘法大師が真言密教の道場として高野山を開かれた当時、高野山の地がどのような景観であったかを明らかにすることは大変難しいことですが、当時の山上の平地は、周囲を鬱蒼とした森林で囲まれた無人の沼野であったといわれています。

2初の大規模な造林

摩尼山の天然林
摩尼山の天然林

弘法大師が嵯峨天皇から高野山を下賜され、七里結界の浄域として定められた面積は定かではありませんが、およそ3,000haの山林があったと推測されています。
正歴5(994)年に高野山は大火に見舞われ、伽藍のほとんどが消失し、その再建のために周囲の森林は著しく伐採されました。大火により荒廃した高野山の復興事業の一環として、長和年間(1011~1015年)に祈親上人によってヒノキ苗が山内各所に植えられたのが高野山での最初の大規模な造林といわれています。

3繰り返される大火と森林保護

針葉樹と広葉樹が混在する森林
針葉樹と広葉樹が混在する森林
光が降り注ぎ植物が生育する人工林
光が降り注ぎ植物が生育する人工林

その後も高野山は度々、大火に見舞われ、その度に寺院等の復旧や修理のため、多くの木材を必要としました。そこで、木材の伐採は皆伐(注1)を避け、択伐(注2)補植を基本方針としてきました。用材は全山から老木を順次選んで伐採され、その跡には将来、建築用材として利用できるヒノキ・コウヤマキ・スギ・マツ・モミ・ツガなどの苗木を植栽して更新を図りました。

  1. (注1)皆伐:一定の面積の森林を、一時に全部または大部分伐採すること。
  2. (注2)択伐:一定の面積の森林の中から、数年から数十年ごとに、成熟木を中心に伐採し、更新させること。

4高野六木の設定

スギ
スギ
アカマツ
アカマツ
ヒノキ
ヒノキ
コウヤマキ
コウヤマキ
ツガ
ツガ
モミ
モミ

文化10(1813)年には、寺院の建築用材として特に重要なスギ.ヒノキ.コウヤマキ.アカマツ.モミ.ツガ.は制木とされ、高野六木が設定されました。高野六木は、寺院や伽藍の修繕用材以外の伐採は禁止されました。このように、高野山の周囲の山々は、開創以後長年にわたり高野六木を中心にした森林の保護育成が図られてきました。

5新政府による山林の国有化

機関車による運材
機関車による運材
伐採風景
伐採風景

開創より約1,000年にわたって約3,000haの森林を管理・保護してきましたが、 明治になると高野山周辺の全山林2,888haの上地令が下され、高野山周辺の山林の大部分は国有林とされました。高野山はこれにより経済的基盤であった山林のほとんどを失いました。
明治19年に9haであった植林は、明治37年には382haにまで拡大しており、この時期にかなりの天然林が伐採されたといわれています。伐採・搬出技術の発展も背景としつつ、それまでの択伐による森林管理から皆伐主体へと徐々に移り変わっていきました。

6森林の還付と諸先徳の尽力

現地踏査中の記念写真
現地踏査中の記念写真
鎌による下刈り作業の様子
鎌による下刈り作業の様子
寺有林の様子
寺有林の様子

上地されて以来、山林の還付について諸先徳により種々の方法によって交渉が続けられ、大正7年から昭和20年まで保管林(注3)として、2,578haの国有林が金剛峯寺の管理下に置かれました。保管林として貸し付けられた山林の多くは、国によってすでに伐採されたところが多く、実際には植林から始めねばなりませんでした。金剛峯寺は大正9年に山林課を設け、保管林の育林管理に力を尽くしました。

(注3)保管林:国の許可を受けて山林を保護育成・造林し、林木を伐採して得た利益の3分の1を国庫に支払うという制度

7森林の還付と諸先徳の尽力

現地踏査中の記念写真
現地踏査中の記念写真
鎌による下刈り作業の様子
鎌による下刈り作業の様子

第2次世界大戦後、保管林のうち、約500haは現在の分収林(注4)として引き継がれ、約600haが本山に返還されました。また、戦前戦後にかけて民有林を数度にわたって買い上げ、経営面積の拡充に努めてきました。昭和26年前身の山林課を引き継ぎ山林部が創設され、1期10ヶ年の施業計画を樹立し、森林の育成と管理に努めてきました。

(注4)分収林とは、山林を造林する目的で、国と造林者が造林前に伐採の益割合を締結し、将来利益を分配する仕組みで、土地が国の契約山林です。平成25年4月1日の国有林野の管理経営に関する法律の一部改正により、伐期が80年ごとに契約延長ができるようになりました。

8奥之院大杉林の天然記念物・特別母樹林の指定

奥之院参道
奥之院参道
巨木の林立する奥之院
巨木の林立する奥之院

一の橋から奥之院御廟までの約2km面積17haに及ぶ墓地には、大杉林が林立し、数万とも言われている墓石群と共に幽玄かつ荘厳な雰囲気をかもし出しています。この奥之院の大杉林は、江戸時代に全国各地の大名から苗木の寄進を受け、信仰林として現在に至っております。昭和33年4月1日に樹勢が良好であり、永年にわたって保護されている為に、和歌山県の天然記念物として指定されており、昭和46年3月30日には、樹形、材質共に優れた樹木を保持し、優良な種子・穗木を確保する目的で、特別母樹林として国指定を受け守られております。 (平成26年12月現在の特別母樹林本数733本)

9昭和天皇香淳皇后両陛下行幸啓

ブリ縄の実演を天覧
ブリ縄の実演を天覧
現在の天覧場所
現在の天覧場所

昭和52年4月、全国植樹祭が那智山で開催されました。昭和52年4月18日、昭和天皇香淳皇后両陛下が高野山に行啓されました。
植物に御造詣が深い陛下は摩尼山山麓にて植物観察をなされ、三本杉に於いて高野山の伝統的な林業技術であるブリ縄の実演をご覧になられました。

10ふるさと文化財の森の指定

檜皮採取の様子
檜皮採取の様子
檜皮葺き作業の様子
檜皮葺き作業の様子

ふるさと文化財の森は文化庁が文化財建造物の保存のために必要な、山野から供給される資材(特に調達が困難なもの)を安定的に確保し、技能者を育成に関する普及啓発活動を推進するシステムです。
先人が植え大切に育て、たくさんの皆様の信仰心のおかげで整備された「信仰の森」が樹齢100年を経過して檜皮(ひわだ)(注5)の採取が可能となりました。このシステムに天然林を含め檜皮(ひわだ)採取が可能なエリア約125HAをふるさと文化財の森に設定申請し、平成26年3月24日に設定されました。

(注5)檜皮(ひわだ)とは高齢級のヒノキの樹皮を剥いだもので多くの文化財の屋根葺き材料とされています。

11金剛峯寺山林の面積

分収林の全景
分収林の全景
分収林の全景
分収林の全景
分収林4m枝打ち後の山林
分収林4m枝打ち後の山林
寺有林間伐後の山林
寺有林間伐後の山林

金剛峯寺山林総面積

1642.34ha
(平成26年12月現在)

地域別内訳 面積 寺有林班
1. 境内林 94.49ha 高野山
2. 高野山 754.63ha 高野山 1~53
3. 辻の茶屋
  湯川
305.35ha 高野山 54~68
4. 北寺 16.95ha 高野山 70
5. 大滝 118.91ha 高野山 69-1~69-3
110~114
6. 森脇 3.19ha 高野山 69-4
7. 黒河 21.1ha 九度山町 71
8. 内子谷 36.79ha 高野山 72
9. 立里 152.45ha 奈良県野迫川村 105~109
10.十津川 138.48ha 奈良県十津川村 100~104

分収林総面積 482.91ha

高野町高野山国有林236林班~244林班.216林班

森林セラピー

  • 森の自然が織りなす
    癒しのプログラム

「森林セラピー」は、森の自然が織りなす風景や香り、音色や肌触りなどを、五感を使って楽しむことで心と身体の元気を取り戻す癒しのプログラムです。
高野山では、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されたエリアを含め、2007年に「森林セラピー基地」として認定されました。
森林浴効果を科学的に検証した「森林セラピー」を通して高野山の魅力を気軽に体感して頂くことが出来ます。

弘法大師空海が開いた祈りの聖地、高野山。
1200年の歴史が育んだ森の空気と生命力に抱かれ、寛ぎと癒しの時間へといざないます。
高野山の自然と歴史文化に親しみながら、リラックスした休日をお楽しみ下さい。


森林セラピー

※令和6年度は4月~11月にかけて、以下の各種プランを開催予定です。
 詳細はパンフレットをご覧下さい。
 参加ご希望の方は申込書にご記入の上、メールかFAXでお送り下さい。

・森林セラピー体験ツアー
・森林セラピー ソロプラン
・森林セラピー森林プラン
・森林セラピーフリープラン(森林カフェ 親子セラピー 森林ヨガ)
・森林セラピー× 阿字観体験
・阿字観 × 念珠づくり
・五感+α で感じるセラピーツアー 味 ・ 意・ 視 聴 ・ 嗅・触
・森林セラピールートを巡る古道歩きツアー(高野山参詣道 町石道)


令和6年度森林セラピーパンフレットをダウンロード(5MB)


令和6年度森林セラピー申込書をダウンロード



お問い合わせ

高野山寺領森林組合

〒648-0211
和歌山県伊都郡高野町高野山45-17

HP:https://www.forest-koya.com/
Facebook:https://www.facebook.com/jiryou.koyasan/

電話番号:0736-56-2828
FAX番号:0736-56-9055
メール: jiryou@extra.ocn.ne.jp

会報『共利群生のもりをめざして』の御案内

  • 2012年 創刊号
      ~2024年 24号

高野山の幽玄な雰囲気を創出しているのは、奥之院参道沿いに立ち並ぶ樹齢400年から600年の大杉や周囲の山々の成熟した森林です。
その森林の大半を抱える金剛峯寺山林部は、2012年に創立60年を向かえました。
これを期にこれまでの歩みとこれからの取組を情報誌『共利群生のもりをめざして』としてお届けいたします。

こちらで過去の会報をご覧いただけます。

木製品のご案内

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⾼野⼭は⼀千⼆百年前に真⾔密教の根本道場として開創された聖地であります。
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※カレンダーは毎年の干支で製作しております。画像は令和5年の卯になります。

高野霊木カレンダー
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〒648-0211
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宗教法人 金剛峯寺山林部
TEL : 0736-56-2016
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