〈五輪塔・八万四千宝塔〉
弘法大師ご入定の地である奥之院。入口の一の橋から弘法大師御廟まで通じる約2kmの参道には、皇族をはじめ戦国武将や一般庶民に至るまであらゆる人々の墓碑や五輪塔など、約20万基ともいわれる供養塔が立ち並んでいます。
その供養塔のひとつひとつは、お大師さまにお守りいただき浄土へ導かれますようにとの願いを込めて、お大師さまのお膝元である奥之院に宝塔を奉納するという信仰が、今に受け継がれてきたものです。
仏教の開祖であるお釈迦様が入滅された後、荼毘に付されたご遺骨(仏舎利)は八分され各地で祀られました。
その後古代インドのアショーカ王によってさらに細かく分けられ、インド各地に八万四千の仏舎利塔が建てられ、その宝塔は仏教の象徴としての意味を持つようになりました。
お釈迦様が各地で説かれた広大無辺なる教えは『八万四千の法門』と呼ばれ、その教えに帰依することによって、苦から離れ安楽を得て、亡き者は極楽浄土に往生すると説かれています。このことから、日本の総菩提所と言われる高野山に宝塔を納めるという信仰が生まれました。
奥之院に立ち並ぶ約20万基におよぶ供養塔。納められている五輪塔(宝塔)は大日如来そのものを表し、宝塔を奉納することで自身の仏性とお大師さまとのご縁を結び、心の拠り所とされてきました。
令和元年四月に高野山円通律寺において発見された一万数千基からなる木製の「八万四千宝塔」もまた、江戸時代の大師信仰を今に伝えるもので、江戸中期から後期に至る民衆の願いが込められた宝塔であり、高野聖が全国各地を行脚し、人々の願いを高野山にお届けし、奉安されてきたものです。
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