金剛峯寺からのお知らせ
Category
Years
Notice
-
文化審議会(会長島谷しまたに弘幸ひろゆき)は、令和6年11月22日(金)に開催された同審議会文化財分科会の審議・議決を経て、新たに129件の建造物を登録するよう文部科学大臣に答申しました。
この結果、官報告示を経て、登録有形文化財(建造物)は14,432件となる予定です1 登録有形文化財(建造物)の新規登録
○金剛峯寺 9件(高野町)
奥殿(旧貴賓館)、別殿(旧客殿)、応接室(旧貴賓館附属浴室)、
奥殿渡廊下、阿字観堂、新書院、真松庵、勅使門、奥殿塀
○常喜院 4件(高野町)
本堂(旧最勝院本堂)、客殿、拝殿、山門◆金剛峯寺 9件
金剛峯寺は高野山の市街地中心部に位置する高野山真言宗の総本山寺院である。敷地東側には重要文化財(建造物)金剛峯寺本坊が所在し、西側には近代以降に整備された迎賓施設群が所在する。西側の敷地中央に奥殿が建ち、東に別殿と応接室が奥殿渡廊下で接続する。奥殿の北西隅には新書院と真松庵が接続し、敷地北辺には阿字観堂が建つ。奥殿周囲には蟠龍庭と呼ばれる石庭が広がり、庭の南側は勅使門と奥殿塀で区画される。
奥殿、別殿、奥殿渡廊下、勅使門、奥殿塀は昭和9 年(1934)の弘法大師御入定1100 年御遠忌大法会に際し建てられた。金堂や根本大塔の再建に携わった大浦徳太郎がこれらの監督技師を務めた。奥殿は皇族用の貴賓室として使われる客殿で、応接空間である玄関と、貴賓用の上質な和室八室からなる。良材を多用し、中世風の玄関をはじめ随所に古式な要素を取り入れた格式高い客殿である。来賓向けに荘厳された奥殿に対し、別殿は僧侶や一般信徒に向けた落ち着いた意匠の大規模かつ上質な客殿である。
新書院、真松庵、応接室は昭和40 年(1965)の高野山開創1150 年記念法会に際し建てられた。
新書院は資産家生島五郎兵衛の寄進により神戸から当地へ移築され、奥殿と同様に貴賓室として使われる。昭和46 年(1971)には昭和天皇皇后両陛下がご宿泊なされた。内部は障壁画等で華やかに飾られ、格式高く造られた書院座敷である。真松庵は松下幸之助により寄進された貴賓用の茶室である。軒の高さを抑えた落ち着いた外観で、内部には凝った造りの天井や面皮付柱を用いた上質な数寄屋建築である。
阿字観堂は昭和42 年(1967)、高野山の堂宮大工辻本喜次が設計施工を担った高野山内唯一の阿字観道場である。阿字観とは真言宗における瞑想法の一つである。近世以前の建築様式が巧みに取り入れられ、高野山工匠の技術力の確かさを伝える建造物である。
これらはいずれも高野山真言宗の総本山寺院において、皇族をはじめとする賓客をもてなすに
ふさわしい格式を備えた建造物群であり、文化財として価値が高い。◆常喜院 4件
常喜院は高野山の市街地中心部に位置する高野山真言宗の寺院である。常喜院は、古くは往生院谷に位置する聖方の寺院であったが、江戸時代には行人方に属した。旧地での火災で境内を類焼し明治3 年(1870)に最勝院のあった現在地に移転した。金剛峯寺の南にとられた東西に長い境内には、東に山門を構えて正門とし、続いて西に客殿、拝殿、本堂を並べて建てる。
常喜院本堂(旧最勝院本堂)は江戸時代末期に建設された最勝院時代からの本堂である。土蔵造平屋建、銅板葺屋根で、昭和41 年(1966)に背面側に増築し現在の形になった。北側に護摩堂を併設する複合仏堂で、火災に強い土蔵造である点に特徴があり、高野山寺院の本堂建築の一つの典型を見せる。
客殿は常喜院が現在地に移転した明治前期に建設されたものとみられ、玄関が昭和41 年(1966)に増築された。木造平屋建、銅板葺屋根とし、大広間や仏間、書院座敷、台所を合わせた規模の大きな建造物で、書院座敷の上段の間は繊細な意匠を備え高い格式を誇る。
拝殿は日露戦争の戦没者を慰霊する慰霊塔を参拝するための拝殿として、明治43 年頃に高野山の他寺院の客殿を転用・移築して建設された。戦後に慰霊塔を本堂前の現位置に移設したことにより、拝殿としての役割はなくなり、以降現在に至るまで宿坊施設の一つとして使われている。
木造平屋建、銅板葺屋根で、正面と背面に軒唐破風を付けた特徴ある外観を示す。客殿同様に上段の間を備えた書院座敷が設けられ高い格式を示す。
山門は昭和30 年(1955)頃に前述の堂宮大工辻本喜次の設計施工で建てられたと伝える。辻本家は高野山で代々続く棟梁家で、高野山内には金剛峯寺奧之院御供所、光臺院多宝塔(令和6 年7 月に登録答申済み)等の作品が残る。木造四脚門、銅板葺で建ちが高く比較的大ぶりな門である。古代や中世の社寺建築から引用した華やかな細部意匠を持つ点に特徴があり、常喜院の正門
として歴史的景観の形成に寄与している。詳しくは文化庁ホームページの今回の答申された全件の詳細ご覧ください。