金剛峯寺からのお知らせ

高野山真言宗からのお知らせ

Notice

  • お知らせ

    2023.10.10

    「LGBT理解増進法」について 高野山真言宗宗務総長の声明

     標記の件につきまして、性的マイノリティの方々への偏見や差別を無くし、多様性を認め合う社会の実現を願い、宗務総長名にて声明を公表いたします。

    LGBTQ+について

    多様性を認め合うことが仏の道にかなう

     「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(LGBT理解増進法)が2023(令和5)年6月に施行されました。

     人間は、国籍、人種、出自や、障害のあるなしなどによって差別されてはなりません。同様に、性別や性的指向、性自認によって差別されることはあってはならないのです。

     人間は生まれながらにしてみな平等です。お釈迦さまの説かれた仏教の教えの基本はまさにここに立脚しています。社会にはいろいろな人が暮らしています。多様性を認め合うことこそが、少数者だけでなく、多数者にとっても生きやすい社会なのです。それなのになぜ、偏見や差別が起きるのでしょう。それは、自分が人より優位に立ちたいという、おごった考えが心の中に生じるからです。

     弘法大師さまは「人心には高下あり、仏道は不高下なり」(「一切経開題」)とおっしゃっています。「人の心が差別を生むのだ、仏教の根本には差別はない」ということです。この仏教の原点に返って、お互いを敬い相手の立場に立って物事を考えることが大切なのです。

     高野山真言宗では、人と人との関係において「相互供養 相互礼拝」を信条としています。相互供養とは、人と人がお互いに尊敬し養いあい、お互いの心の中にいる仏さまに対して真心を供養することです。相互礼拝とは人に対する心のこもった行為、お互いの存在を認め合い、思いやりの心で接することです。お互いが認め合い、助け合うことで、相手に対する感謝の気持ちを態度や心に出すということです。

     また「悉有仏性」といって、人はみな仏さまになれる素質を持っています。けれども人それぞれ個性があり、得意なことも不得意なこともあります。自分と違うからと言って非難していたらきりがありません。それぞれのいいところを見つけ、相手の立場を尊重する。多様性を認め合うことから、お互いの信頼が生まれるのです。その社会こそが弘法大師さまが目指されたこの世の極楽浄土「密厳国土」なのです。

     基本は人間の尊厳が守られる社会。多種多様な価値観がある中、人は皆かけがえのない「いのち」、仏性を持ってこの世界で共に生きています。人を見かけで判断するのでなく、相手の内面をしっかり見つめて、お互いに高め合っていける社会を作っていきましょう。

    2023(令和5年)10月10日
    高野山真言宗 宗務総長 今川 泰伸

    ※性的指向 人の恋愛感情や性的な関心がいずれの性別に向かうかの指向のこと
    ※ジェンダーアイデンティティ(性自認) 自分がどの性別であるかの認識
    ※LGBTQ+ 様々な性的マイノリティの頭文字
    L レズビアン(女性同性愛者) 
    G ゲイ(男性同性愛者)
    B バイセクシュアル(両性愛者)
    T トランスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性別と自分の認識している性別が一致していない人)
    Q クィア(規範的な性のあり方以外の人。近年は性的マイノリティ全般を包括する言葉として使われる)
      クエスチョニング(自らの性のあり方等について特定の枠に属さない人、わからない人、典型的な男性・女性ではないと感じる人)
    + プラス (上記以外の性的マイノリティの略称)